チームがゴールを達成する上で「評価制度」は極めて重要な役割を担います。
組織がビジョンを達成させられるか否かは「評価制度」をうまく機能させられるか否かにかかっていると言っても過言ではないでしょう。
反対に、チームに合わない誤った「評価制度」を敷いてしまうと組織崩壊にまで発展する可能性も孕む企業経営において押さえておくべき最重要要素の一つと言えます。
しかしながら「評価制度」の敷き方は非常に自由度が高く「結局どのように部下を評価するのがベストなのだろうか、、、」といった悩みを抱えている管理職の方も多いのではないでしょうか?
今回は「組織を成長させる」という点に焦点を当て、評価制度が持つ意義や機能、具体的な事例からテクニカルな手法論までご紹介していきます。
「評価制度は何のために敷くんですか?」
と問われたらあなたは何と回答するでしょうか?
「部下を評価するため」
「組織の序列を明確化するため」
「組織全体のモチベーションを高めるため」
この辺りが一般的な回答でしょうか?他にも様々な答えが想定されますが、我々の回答は少し異なります。冒頭ではありますがこれが今回の記事で最もお伝えしたい最重要ポイントです。評価制度を敷く理由、それは間違いなく「組織がビジョンを実現するため」であるべきです。上記に挙げた3つの回答はビジョンを達成させるための「手段」にはなり得ても「目的」にはなりえません。「評価制度」をうまく機能させられていない企業の多くは、えてしてこの「手段」と「目的」をはき違えてしまっているケースが多いです。
評価制度を敷く理由は「部下のため」でも「モチベーションのため」でもなく、「組織がビジョンを実現するため」であるということを念頭に置いて頂いた上で、以下を読み進めていただければ幸いです。
評価制度はビジョン達実現の為にあるとした場合、「正しく評価できるか否か」は「正しく目標数値を設定できるか否か」と言い換えることもできるでしょう。仮に設定した目標数値を社員が達成したとしても、それがビジョン達成に繋がる正しい成果でなければそもそも企業にとって意味のある成果ではなくなってしまうからです。
以下ではゴールに繋がる評価制度を論じる上で、ゴールに繋がる正しいKPI設計についても言及をしていこうと思います。
正しい評価制度のあり方について述べるため、まずは「企業」の仕組みから振り返ってみましょう。企業という生態系を構築する要素として核となるのがビジョン、ミッション、バリューです。
・ビジョン:将来ありたい姿
・ミッション:その組織が果たすべき使命
・バリュー:組織における共通の価値観・行動指針
企業における経済活動はこのビジョン実現に紐づいています。戦略を立てるのも、物を売るのも、人を雇うのも、社員を評価するのも、全ては組織がビジョンを達成するという大命題のための手段です。
そのため、企業の経済活動は上記ピラミッドの上流(ビジョン達成)から下流(施策実行)へと業務に落とし込まれていきます。
①ビジョンを達成するために「戦略」を立て、
②その戦略を遂行しきるために「戦術」を立て、
③その「戦術」を実行するために「施策」を行っていく、、というイメージです。
今更触れるまでもない当然のことのように思えますが、評価制度がこの流れに紐づいていないケースが意外と多く見られるので、まずは基本の考え方からおさらいしておきましょう。
目的達成に紐づけたKPI設計とはどのように設定すればよいのでしょうか?
それは「KGIから逆算したKPI設計をすること」です。上記の①②③で上から下へと戦略を施策に落とし込んでいく流れをおさらいしました。何を持って戦略達成とするのか?という最終目標の指標をKGIと言います。しかし、実際に設計されたKPI目標がなぜかKGI達成に紐づいていないというケースが多く見られます。設計したKPIは本当にKGI達成に紐づいているのか?を下流から上流への視点も持ちながらしっかりと確認するようにしましょう。
例で見てみます。
BtoB企業の場合
サブスクリプションモデルのSaaS系企業で考えてみましょう。定額制の月額サービスは基本的に継続利用を前提としたビジネスモデルです。従って、「新規の受注を取る」ことも大切ですが、サービスに価値を感じてもらい「契約を更新してもらうこと」がより重要なポイントになります。ここでKGIを「契約更新数昨年対比130%」と設定した場合、中間フローで設定されるKPIは「契約更新数昨年対比130%」というKGIの達成に紐づいた指標になっている必要があるわけです。よくある事例をご紹介します。受注後の顧客対応を担当するカスタマーサクセスが、サービス導入時の設定業務を効率よく捌くことばかりに注力してしまい、顧客とのコミュニケーションをなおざりにしてしまうというケースが多いです。本来であればオンボーディングによる顧客とのコミュニケーション、ご利用状況や満足度確認に重きを置くべきですが、雑務をこなす量がKPIになっていたりすると契約更新数UPにはなかなか繋がりません。
BtoC企業の場合
BtoC企業では少し違う角度から見てみます。
例えば、上層部から与えられた今期の目標指標が「粗利を昨年対比で130%増加させる」だったとします。
この目標数値を達成するためのキャンペーンとして商品単価を30%カットで販売した場合を考えてみましょう。
高単価商材でハイエンド層のファンが多いようなブランドであれば、今まで手が届かなかったユーザー層の支持を得る代わりに、ブランド価値を棄損してしまうことで既存の顧客は離れていってしまいます。
キャンペーン効果で新規顧客数が増え売上が増加したとしても、市場としては確実にシュリンクしてしまい粗利ベースでは昨年よりも減少してしまうでしょう。
短期的な視点のみにフォーカスをして足元の数字を取りに行くと、中長期的な観点で不利益を被る場合がほとんどです。
立てた施策やKPIはその先のKGIに紐づいているか、中長期的に不利益を被る施策ではないか、実行に移す前に確認をしておきましょう。
下記のような、近年のBtoB企業における模範の一つとされている組織体制において、どのような目標設計をしていくことが望ましいのかご紹介をしていきます。
主にサブスクリプション型のビジネスを展開している企業に有効な組織体制で、インバウンドでのセールスを軸としています。
まず、マーケティング部門で企業が顧客との接点を作り出します。
次に接点を取った顧客に対し、インサイドセールスが自社サービスに価値を感じてもらうための施策を打ち見込み顧客との商談を獲得します。
その商談でフィールドセールスが受注に繋げ、カスタマーサクセスがサービス定着のサポートをするという流れになっています。
複数部署で連携して顧客対応をする際は、KGIから逆算されたKPIを設計できているかというポイントが非常に重要になってきます。
下記でそれぞれの部署においてどのようなKPI設計をすべきかご紹介をしていきます。
マーケティング部門は顧客と企業の接点を作る非常に重要な役割です。
顧客が自社を選んでくれている理由やデータから抽出できた顧客のインサイトをステークホルダー全体にフィードバックすることを求められますが、組織内の役割としては主に「リード(見込み顧客)獲得」を任されています。
従来のリード獲得方法と言えば、リストに対して架電をするというプッシュ型の方法が一般的でした。
現在では顧客からのお問い合わせやウェビナー参加、オンライン展示会の出展などプル型のリード獲得スタイルも手法として展開可能になっています。
プル型のリード獲得スタイルではこちらから能動的に顧客へのアプローチができないため、見込み顧客を集める難易度はプッシュ型のリード獲得に比べて遥かに上がったと言えるでしょう。
獲得したリードは果たして見込み顧客なのか、興味関心度合いはどのくらいなのかを定量的に判断することはMA(マーケティングオートメーション)ツールを活用することで可能になります。
MAを活用することで、顧客がメールを開封してくれたか?サイトを見てくれたか?何回見てくれたか?などから顧客の興味度をスコアリングすることができます。
また、学生や競合などをデッドリストとしてマーケティングリストから除外することも可能です。
評価の点では「定量評価」と「定性評価」が必要です。適切な見込み顧客を獲得できているかはMAを活用して「定量的に評価」し、引き上げたアポイントがスコアリング設計通りの見込み度合いであったか否か、フィールドセールスからの「定性的な評価」で調整をする必要があります。
「とにかくリード数を何件取る!」という短期視点の数値目標のみを追いかけてしまわないよう注意をしましょう。
次にインサイドセールス部門です。
インサイドセールスは獲得したリードに対して自社サービスにより興味を持ってもらえるよう、メール施策やコール施策など顧客育成(ナーチャリング)業務を担います。
「もっと詳しく話を聞いてみたい!」と顧客に感じていただきアポイントに引き上げていくのが役割になります。
興味関心の高い顧客とのアポイントを創出し続ける過程は複雑であり、顧客へのヒアリング能力、リードのステータス管理能力など評価の際に定量化しづらいポイントが複数存在しています。
ここを無視してアポイントの絶対数だけで評価してしまうと、「とりあえず会うだけでもよろしくお願いします」と言うような成果に繋がらない仕事をしてしまう社員も出てくることが想定されます。
この点についてまずはフィールドセールスにパスした商談のうち何%が見込み化したか?を指標化するとよいでしょう。
この%が仮に80%を超えている場合、インサイドセールスが確実なリードに絞り込みすぎていてフィールドセールスが対応すれば受注に繋がる案件を逃してしまっている可能性があります。
逆に50%の下回っている場合は、営業が無意味な商談に時間を費やしている場合がありますので、70~80%のアポイントが見込み化できている目安でクオリティチェックをするのがベストです。
次にインサイドセールス部隊が創出したアポイントを受注に繋げていく役割を担うのがフィールドセールスです。
アポイントを獲得してから受注に至るまでにはさらに複数のフェーズが存在しています。
このフェーズ管理をしっかりしていくことと、受注に至るまでに発生するタスクを顧客と共にリストアップしていきながら進捗を追っていく丁寧な仕事が求められます。
フィールドセールスの定量評価は売上ですが、マネジメントレイヤーは顧客フェーズごとに営業がどのような対応をしているのかを日々チェックしていくことが求められるでしょう。
そのためには各顧客への対応状況を社内で見える可しておく必要があるため、顧客数や営業人数が多い企業はSFA(セールスフォースオートメーション)ツールの活用をオススメします。
今回のポイントは評価制度なので具体的なセールスフェーズについては紹介を割愛し、マネジメントレイヤーがチェックすべき項目について3つピックアップしてご紹介します。
①顧客フェーズ
まずは顧客フェーズです。商談後、営業は多くの顧客情報を手に入れています。
キーパーソンは誰なのか、興味度合い、課題の認知状況、緊急性、など可能であればSFAツールやクラウドサービスを活用して見える可できるとよいでしょう。
商談後の顧客フェーズが把握できれば次にどのようなアクションを取るべきなのか?をマネジメントレイヤーはすぐに判断することができます。
逆にここが分からないと適切な打ち手を練ることは難しく、受注に至ったとしても期待値とのGAPなどからKGIに紐づかない受注となってしまう可能性もありますので、顧客フェーズが確認できる仕組みを作ることは必須条件だと言っても過言ではないでしょう。
②商談経過日数
次に商談経過日数です。
商談をしてから経過した日数は営業パーソンが顧客フェーズごとに適切なアプローチを遂行できているかをはかる有効な指標になります。
「しつこすぎず」「適切なタイミングで」という抽象度の高い感覚値を求められてきた顧客追尾業務ですが、こちらもリードステータスにフラグを立ててアプローチのタイミングを仕組み化していくことでパフォーマンスの属人化を予防できるだけでなく、売上の底上げにも繋がります。顧客が求めているときに求められている動きを取れているか?という視点で見ると、顧客フェーズとアプローチするタイミングの管理を見える可することはKGIに紐づく評価指標の一つとして有効活用ができるのではないかと思います。
③デッドライン
最後にデッドラインです。
営業として最も良くないのは「失注」が確定することではなく「検討中」がいつまで続くのか把握できていない状態です。
「検討中」というステータスになっている顧客に対しては「いつご連絡を頂けるのか必ず確認を取る」ことを意識付けるよう伝えていく必要があるでしょう。
デッドラインの提案の仕方に対しても仕組み化することが可能です。
例えば、何か解決したい課題があり他社と検討中なのであれば、いつまでに導入をしたいのか?それはいつまでに何を達成したいからなのか?などヒアリング項目を準備しておいてあげると、属人的な営業スタイルから抜け出し組織全体の売上拡大にも繋がることでしょう。
近年増加しているSaaS系企業のようなサブスクリプションモデルのビジネスにおいて特に重要度が増しているのがこのカスタマーサクセスです。顧客の課題解決のために必要なサポートを徹底することでサービスの価値を体感してもらい、継続して長く利用してもらえるように、受注後はカスタマーサクセス部隊が顧客対応をしていく必要があります。
よって、カスタマーサクセスの定量評価は
・顧客満足度
・総契約更新数
・総契約更新金額
・解約率
・アップセル / クロスセル
など、受注後に動いた金額が評価指標となるケースがほとんどです。
特にサブスクリプションモデルでは契約後に更新を獲得できるか否かがビジネス成功への鍵となるので、カスタマーサクセス部隊が営業全体のハブとなって、商品開発、マーケティングへのフィードバックやフィールドセールスへの期待値調整のフィードバックなどを行っていく必要があります。
従来であれば上記でご紹介したフローは1人の営業パーソンが入口から出口まで全て1人で担うケースが多かったですが、このように顧客が自社のファンになってくれるまであらゆる部署のスタッフが連携して対応にあたる場合、各々が組織全体のKGI達成を意識して顧客ニーズから逆算された動きを取ることが必要不可欠になります。
組織マネジメントの観点で見ると難易度は飛躍的に上がりますが、その分顧客ニーズから徹底的に逆算された評価制度、目標設定が必要になるため、今回は上記のモデルを活用してKGIから逆算されたKPI設計についてご紹介いたしました。
尚、全てのBtoB企業に上記の組織構成が有効に作用するわけではありませんのでご注意ください。
次にBtoC企業での例を見ていきましょう。
BtoB企業の場合は顧客が企業なので複数の人が購買に関わり販売プロセスが複雑化しますが、BtoC企業では顧客は1人なためBtoB企業と比べると販売プロセスは幾分か簡略化されます。
ですので今回は販売プロセスごとの評価制度は割愛し、新規顧客獲得とリピート率についてよくある事例をご紹介いたします。
「押し売り」という言葉があります。
売上目標を達成するために多少の「押し売り」は止む無しと考えるか、顧客ファーストで目標未達を選択するかという議論は営業経験のある方であれば誰しも直面したことがあるのではないでしょうか?ここに議論の余地があることが「数字を達成しさえしていれば評価される」ことが絶対条件ではないということを表しています。
例えば店舗販売を例に取ると、来店してくれた顧客に過度な営業をしたために今期の目標数値は大幅に達成したが、リピート率の大幅な減少によって来期以降の売上がジリジリと下がってしまうというケースがあります。
ECサイトを例に取ると、今月の目標売上を達成するために少々無理のあるキャンペーンを打って目標数字を達成したとします。
しかしその結果、キャンペーンを打たないと顧客が商品を購入してくれなくなり来期から目標に大きく届かなくなってしまうということも起こり得ます。
企業ファーストの姿勢は基本的に短期的な数値にしかならず、長期的な売上拡大を見込む場合は顧客ファーストの取り組みや姿勢が必要不可欠な要素となります。
全く当たり前のことを言っているようですが、気が付いたら顧客不在で目先の収益最大化のみに固執してしまうことはよくある例です。
顧客が数ある競合の中から自社を選んでくれている理由は何なのか?その点をどのように定量化して評価制度を敷くべきなのか?に焦点を当てることは売上を拡大する上で必要不可欠な要素として捉えることができるでしょう。
一度使ったサービスや商品を再度購入する、又は定期購入の商品を継続して利用している場合は、基本的に顧客はあなたのサービスや商品に満足しているケースが多いです。
従って、あなたが部下を評価する際や会社の評価制度を変更できる裁量がある場合は既存顧客のリピート率を評価基準の要素として取り入れるとよいでしょう。
もちろん、リピートも含めて目標数値を達成することがビジョンではありますが、目標数値を達成しているが全て新規顧客のみでリピーターは1人もいない店舗と、目標数値は未達だがうち7割はリピーターである店舗では、目標数値を達成している店舗が必ずしも持続可能な店舗であるとは断定できません。
「イチゴの法則」という法則があります。
新規顧客を獲得するコストは既存顧客の5倍かかると言われています。
店舗のファンになってくれる顧客は新規顧客と比べてより多くのお金をサービスや商品に対して支払ってくれます。
従って、店舗のファンを1人作り出せる人材は5人の新規顧客を獲得できる人材と同等の評価をされるべき人材であるということです。
リピーターを着々と増やしている店舗やチームにはガンガン投資をしましょう。そのためには、リピーターを獲得できているか否かを判断できる指標をシステムに組み込むことが重要です。
ここまでの章で適切な評価制度や正しい目標設定について事例を交えてご紹介してきました。
下記ではBtoB、BtoCどちらにも共通して使えるいわば評価制度のテクニカル手法をご紹介していきます。
下記でご紹介する方法はどの組織にも全て当てはまるといったようなものではなく、あくまで合う組織合わない組織があります。それを念頭に置いていただいた上で読み進めてください。
結果で評価することなんて当然のことでは?と思われた方もいらっしゃるかと思いますが、意外にも結果で正しく評価されていないという組織がまだまだ存在していることも事実です。
結果で評価しきれていない場合とは逆にどのような状態かと言うと、定性評価に比重が乗っかってしまっているパターンです。
冒頭で申し上げたように、企業の全ての経済活動は「組織がビジョンを実現するため」の活動です。
従って、ビジョンの実現から逆算された成果目標を達成することは組織において最も評価されるべき事柄だと言えるでしょう。
どうしてプロセス評価をしないのか?という点については、顧客→企業→個人のお金の流れを見るとよく分かります。
まず、個人に対して支払われる給与は勤めている企業から出ています。
企業はどこからお金を得ているのかというと、商品やサービスを提供する代わりとして顧客からお金をもらっています。
顧客が企業に対してお金を払うということは、顧客に対してそれだけ企業が価値を与えたということになります。
なので、顧客により価値を提供した人が社内でより評価されるという仕組みになっているわけです。
これが結果で社員を評価する理由であり、プロセスで社員を評価しない理由になります。
こういった視点から捉えると、「プロセスで社員を評価すること」は「顧客に価値を提供できているのか否か」という視点が評価の観点から抜け落ちていることがよく分かります。
次に責任の所在を明らかにするという点についてです。
「責任」とは「1人1人が追っている成果目標」のことを指します。
各々がどの数値に対して責任を持っているのか?を明らかにすることで、目標未達が発生した際にどこを改善すれば良いのかを明確に可視化することができます。
逆に、それぞれが何の数値に対して責任を背負っているのかが明確になっていないと、しっかり成果を出している人が適切な評価を受けられないという可能性がうまれてしまいます。
「誰が」「どの数値に対して」責任を持っているのか?が明確になっていない場合は、早急に目標数値の責任所在を明確にしましょう。
人間は基本的に楽をしたがる生き物なので、適度な競争意識を与えることで社員は秘めた能力を余すことなく発揮しようとします。
絶対評価の場合、社員は自分の成果目標さえ達成していればとやかく言われることがないため精神的には安心できることでしょう。
しかし、相対評価の場合はその評価基準に従って1位から最下位までの序列をつけられることになります。
生存本能の観点から生じる「最下位は避けたい」という心理を逆手に取り余したパワーを引き出すことで組織全体のパフォーマンスを最大化できるということです。
また、絶対評価で5段階設けた場合、可もなく不可もない社員に対して上司は3という評価をつける傾向が高いです。
しかし相対評価の場合は上司たちが集まって部下の評価の目ぞろえをするためいい加減なことをやっている評価者は公に露見されることになるので上司達をきちんと働かせることにも役立ちます。
売上や目標数値以外の事項も徹底して「数値化」する必要があります。
例えば、上司から部下に対して「なるべく早めにこれ対応お願い」と業務依頼をしたとします。
これでは「いつまで」に完了しなければならないタスクなのか上司と部下の間で認識の齟齬が起きてしまいます。責任の所在という面で捉えても、タスクの締め切りが設定されていないので責任の所在を断定できません。
「今日の何時まで」など日頃から具体的に「数値化」してコミュニケーションをはかる必要があるでしょう。
数値化する際の注意点は最終成果目標から逆算して中間KPIを設定することです。
例えば、「今月はアポイントを20件取ります!」という目標を立てたとして「なぜ20件なのか?」という問いに「先月が15件だったからです!」という答えは✖です。
向上心があって一見良さそうに聞こえますが、そのKPIの設定方法では本人が受注目標を意識できず目標達成から遠のきます。
正しくは「受注目標が3件で受注率が15%なので受注目標を達成するためには20件の商談数が必要だからです」となります。最も分かりやすい受注と営業の例を取りましたが、全ての中間KPIが最終的な成果目標から逆算された目標になっているのか?は随時確認をしながら目標設定をすることが重要です。
今回のコラムではゴールに紐づく評価制度について事例やテクニカルな手法論を解説しました。
BtoB、BtoC問わず一貫して共通しているポイントは「組織がビジョンを実現する」ことに紐づいた評価制度になっているのか?という点です。
企業は利益追求を目的としているため現場のKPIは自ずと「数値目標」になります。
しかし、短期的な視点での目標数値達成ばかりに囚われてしまうと事業は右肩下がりになっていく傾向が高いです。
・現場の意識が企業ファーストになっていないか、
・一つ一つのKPI達成はKGI達成に紐づいているか、
・ビジョンの達成に紐づいているのか、
・定量化すべきポイントはどこなのか、
「評価制度を綿密に設計していくこと」は「企業が成長するための仕組み作りそのもの」です。
しっかりとビジョンを達成できる組織作りをしていくためにも、KGIに紐づいたKPI設計を徹底して落とし込み強い組織作りをしていきましょう。
オンラインのお打ち合わせにて、業務委託の活用方法や候補者をご提案をいたします。