戦略設計

NPSとは?調査方法から分析/活用方法まで全て解説

2022/06/23

NPS(Net Promoter Score)は自社の商品・サービスに対する顧客ロイヤリティを測るための指標です。近年、今後の業績向上に繋げられるといった観点から注目を集めています。

このコンテンツでは、NPSと顧客満足度との違いから、計算方法、活用の仕方・留意することまでご説明いたします。

Contents

NPSとは

NPSとは、顧客が商品やサービスを家族や友人に薦めたいと思うかどうか(顧客ロイヤリティ)をスコア化した指標です。
これまで商品・サービスの満足度を測る基準はあっても、他の人に薦めたいと考える顧客ロイヤリティを計測する基準は曖昧でした。
しかし、NPSを導入することによって計測基準が明確になり、顧客ロイヤリティのスコア化が可能となりました。

顧客属性について

NPSを計測する上で3つの顧客属性に分けて分析が行われます。

・批判者
・中立者
・推奨者

以降、1つずつ解説していきます。

批判者

批判者とは、商品やサービスに対して不満を感じており、周囲に批判的な評判を拡散する可能性が高い顧客属性です。
商品・サービスに対して批判的な感情を抱いており、早期に他に切り替えてしまいます。
仮に現在の商品・サービスから他へ乗り換えることができず、長期的に使用しなければならない場合、頻繁に苦情を寄せるようになる可能性が高いです。
そのような事態が継続すると、企業のオペレーションコスト増加、社員のモチベーション低下に繋がるため対策が必要です。
対策としては、批判者がどのような理由で批判的な感情を抱くことに至ったのかを把握する必要があります。
改善必要性が高い問題点の場合、早急に施策を打ち出すことが重要です。

中立者

中立者は批判者のように、商品・サービスに対して批判的な感情が強くないです。
一方で、推奨者のように強いロイヤリティを感じている訳でもないため、他に良いものがあれば、すぐに競合へ流れてしまいます。
現時点ではきっかけがあれば、競合に流れてしまう状況ですが、意見を汲み取ることにより、推奨者に変えられる可能性があります。
調査の上、中立者と結果が出ても放置せず、意見を確認する必要があります。
良い意見も悪い意見も持ち合わせていないため、他の属性と比較するとコメントをもらえる可能性は低いですが、できる限り意見をもらえるように働きかけることで、推奨者・批判者からは吸い上げられない意見を得ることができます。

推奨者

推奨者は商品・サービスに対して非常に好意的であり、自身がリピーターになるだけではなく、友人や家族にもポジティブな評価を積極的に拡散する傾向があります。
友人や家族としても、企業の広告・営業よりも、信頼できる人から推奨された方が、その商品・サービスに対する信頼度が高く、実際の購入・利用に繋がりやすくなります。
また、紹介された友人や家族が新しい推奨者になることで、さらにポジティブな紹介の輪が広がります。
推奨者はすでに商品・サービスに対しての満足度が高いため、どのような理由で支持しているのかを分析することが重要です。
支持理由となっている部分をより強化することで、推奨者のロイヤリティをさらに向上させることにも繋がります。

NPSと顧客満足度の違い

NPSと顧客満足度はどちらも商品・サービスに対する満足度を分析しますが、その方法・得られる成果に違いがあります。

・短期的な満足度の指標である顧客満足度
・長期的な満足度の指標であるNPS

以上の視点から、詳しく解説していきます。

短期的な満足度の指標である顧客満足度

顧客満足度の指標は、「計測した時点」です。
例えば、商品を購入・利用した時点で、どれだけ提供された価値に対し、満足感を得ているかを質問します。
しかし、満足度はあくまで購入・利用時点の評価であって、再購入・他の人への紹介に繋がるとは限りません。
たとえ満足度が高かったとしても、次は違う商品・サービスを利用したいと考える場合もあります。
そのため、顧客満足度は、短期的な満足度の指標と言えます。

長期的な満足度の指標であるNPS

NPSが顧客満足度と最も違うのは、「顧客が将来どのような行動をするか」に関して質問の軸を置いていることです。
代表的な例として、顧客満足度では、「この商品・サービスに満足していますか?」という質問を投げかけます。
一方、NPSで使われる質問の内容は、「この商品・サービスを他の人にも薦めたいと思いますか?」です。
ここで「他の人にも薦めたい」と答えた顧客は、実際他の人が購入することに繋がる行動を取る可能性が高いです。
前述したように「他の人にも薦めたい」という口コミは、非常に強力な効果を発揮します。
そして、購入後、実際に利用して高い満足感を感じることができれば、更に他の人へお薦めすることに繋がります。
このように、NPSの質問は顧客の将来行動に対して質問して、得た結果をもとに分析を行っています。
NPSを活用することで長期的な収益の向上に繋げることができるため、「業績との相関性」が非常に高いと言えます。

NPSのメリット

企業がNPSを導入するメリットとして、次の3つが挙げられます。

・ユーザーが気軽に回答できる
・競合との比較ができる
・商品・サービスの改善に繋がる

以降、1つずつ解説していきます。

ユーザーが気軽に回答できる

NPSの計測では、1つの質問に答えるだけで分析結果を出すことができます。
回答者は、深く考えず、正確な点数をつけるだけなので、時間をかけず簡単に回答することが可能です。
質問項目が多かったり、長い文章を求める質問になると、回答者が、質問の内容を読み、コメントを考える時間がかかります。回答者に負荷がかかり過ぎると、回答せずに離脱してしまう数が増えてしまいます。結果的にアンケートに答える人が減り、回答率低下に繋がってしまうのです。
顧客の推奨度をさらに上げるという目的を達成するためには、多くの回答を得ることが重要です。
しかし、回答率が低いと、計測結果に根拠がなくなってしまい、十分な結果を得ることができません。
例えば、100人の顧客にアンケートを配布したとして、回答が5件だと、どれだけその5件を細かく分析したとしても、商品・サービスのNPS分析ができたとは言い難いです。

NPSにおける質問は、自由記述ではない、11段階の数値を答えるだけのものがメインになり、顧客も時間をかけずに気軽に回答できるため、質問に対する回答率を高めることができます。

競合との比較ができる

NPSを導入することで、競合との比較を行うことができます。
NPSは、「この商品・サービスを他の人に薦めたいですか?」が質問の軸になり、会社ごとで質問の内容が基本的には変わりません。
そのため分析結果から競合他社と比較し、どのような立ち位置かを把握することが可能です。
例えば、競合他社が自社と類似の商品を展開していた場合、分析結果を比較することで、顧客にとって自社と競合他社の商品どちらを薦めたいかを明確にすることができます。
仮に競合他社の方が顧客ロイヤリティが高かった場合、競合他社の結果を分析することで、自社の商品・サービスの改善に繋げることが可能です。

商品・サービスの改善に繋がる

NPSを導入することで、商品・サービスの改善に繋がります。
推奨者の割合が高ければ、それだけ商品やサービスに対して満足感を抱いている顧客が多いということになります。推奨者のような、いわゆるロイヤル顧客の、自社商品を推奨したい理由が明確にわかれば、次の商品開発や広告宣伝などに活かすこともできます。
逆に、批判者が多い場合には、原因となる部分を洗い出し、商品・サービスの問題改善をする必要があります。
改善した結果、推奨者の満足度をさらに上げることができれば、よりポジティブな評判が広まることにも繋がります。

NPSのデメリット

企業がNPSを活用するデメリットとしては、次の3つが挙げられます。

・質問の設計が難しい
・日本の評価は海外に比べて低くなりやすい
・科学的根拠に乏しい

以降、1つずつ解説していきます。

質問の設計が難しい

NPSは質問の仕方によって、得られる結果が大きく変わってきます。
前述した質問内容だけでは、商品・サービスを更に良くするためには、どうしたら良いかまでは明確に分かりません。
その後の質問を、得たい目的に合わせられるように、調査の目的を具体的に考えて、質問を設計することが重要です。
しかし、質問数を増やしすぎると、回答率の低下にも繋がってしまうため注意が必要です。
質問に答えるのにも時間と労力がかかるため、顧客が時間をかけずに答えやすい質問設計をすることが重要です。

日本の評価は海外に比べて低くなりやすい

点数をつける方式になると、日本人の傾向的に、海外に比べて中央値の5点を付けやすく批判者が多いという結果になりがちです。
しかし、その結果を悲観的に見過ぎてしまうと、商品価値を見誤ってしまう可能性があるため注意が必要です。
ただ、推奨者の点数である9〜10点を付けないことには、何かしら理由があるため、原因を明確にして改善はしていくべきです。

例えば、スーツを扱っている販売店で、商品価値や価格に対しては満足度が高いものの、スーツの種類やシャツなどの関連商品の品揃えに対して満足度が低いとします。
その場合には、スーツやシャツなどの関連商品の品揃えを改善するといった対応が必要になります。
このように推奨者の点数を付けないことの原因に対して、改善をしていくことが重要です。

科学的根拠に乏しい

質問に対する回答は、数値結果でも、顧客個人の感想です。
そのため得られる結果は、科学的根拠に乏しいものになります。
質問の仕方によっては、顧客もどのように理由付けして良いかわからなくなってしまいます。
そのためアンケートを取る際に、回答者が本音で答えやすいよう、質問はしっかり目的にあった内容で整理しておくことが重要です。

NPSの調査方法の流れ

NPSは以下の2つの流れで調査が進められていきます。

1. 2種類の調査方法から設計する
2. NPS調査の質問項目を設計する

以降、流れに沿って詳しく解説していきます。

①2種類の調査方法から設計する

まずは以下2種類の調査方法から設計します。

・リレーショナル調査:企業のブランド全体の評価
・トランザクション調査:顧客ごとの体験に対する評価

以降、1つずつ解説していきます。

リレーショナル調査

リレーショナル調査とは、「企業のブランドや商品に対する顧客の総合的な満足度を調べる調査方法」です。
調査対象になる顧客は、年間を通して取引がある顧客となります。
リレーショナル調査は年間を通じた調査であり、質問数が20問以上と多くなるのが一般的です。
リレーショナル調査を行うことで、以下の結果を得ることができます。
・サービス全体で改善すべきこと
・他社ブランドとの強みや弱みの比較

全国に多店舗展開する架空の美容室である「A美容室」を例に説明します。
まず「美容室を探している友人や知人に対して、A美容室を利用することをどの程度おすすめしたいと思いますか?」と推奨度を質問します。
その後、推奨度を上げるための改善点を、確認するための質問を加えます。
質問の結果、「店舗へのアクセス」「料金設定」という項目が、顧客ロイヤリティを作り出す結果が出たとします。
「店舗へのアクセス」が課題となっている場合には、出店戦略を見直して改善を図る必要があります。
このようにリレーショナル調査を行うことで、より顧客ロイヤリティを上げるためのヒントを明確にすることができます。

トランザクション調査

トランザクション調査ではリレーショナル調査とは異なり、体験をする毎に調査を行います。
トランザクション調査はその都度実施するため、どの部分に改善点があるのか細かく結果を把握することができます。
複数店舗を展開しているのであれば、店舗ごとに調査を実施することで、店舗ごとの改善点を明確にすることが可能です。
架空の美容室「A美容室渋谷店」の例をもとに、トランザクション調査に関して、説明していきます。

トランザクション調査では、カットやカラーが完了した後すぐに、「A美容室渋谷店を利用することを、どの程度友人や知人にお薦めしますか?」と質問します。
リレーショナル調査と同様、推奨度に影響を与えた要因を、記述してもらうよう促します。
店舗での体験であれば、「接客」や「美容師のスキル」などが挙げられます。
ここで、「A美容室渋谷店」は、美容師のスキルは高く、要望通りの髪型にしてくれるが、接客態度が良くないといった回答があれば、美容師の接客教育を再度実施することで、店舗の顧客ロイヤリティ改善を図る必要があります。

このようにトランザクション調査を実施することで、体験時点での細かい改善の実施に活用することができます。

②NPS調査の質問項目を設計する

次にNPS調査の質問項目を設計します。
商品・サービスを更に良くするためには、目的に沿った質問の設計が必要です。

また、NPS調査を設計する際には以下の2点に関しても意識する必要があります。

・設問は7問以内にすること
・5分以内に回答できる内容にすること

アンケートでは回答しやすさも重視されるため、極力短時間で必要最小限の質問をすることがポイントです。

NPS調査の基本構造は以下の4つの項目です。
・推奨度
・推奨/非推奨理由
・ロイヤリティ構成要素
・顧客・セグメント・行動
具体的に質問内容として落とし込んだものを、以下の表にまとめています。

以降、NPSの基本構造の項目に関して、1つずつ解説していきます。

Q1:推奨度

推奨度は他の人へ薦めたいと思う度合いを測ります。
例えば、「あなたは〇〇(企業/サービス/商品)を家族や友人に薦める可能性はありますか?」と聞き、顧客には0から10の11段階で回答してもらうようにします。
推奨度スコアをもとに他の質問結果をまとめていくため、分析結果を出すのに必須となる情報です。

Q2:推奨/非推奨理由

推奨度スコアの回答に対する理由を記入してもらいます。
「Q1で回答した点数の理由を自由にお書きください」と質問することで、自社の商品・サービスに対する顧客の本音を確認します。
顧客の本音を知ることで、商品・サービスの顧客ロイヤリティを上げるために必要な改善点を明確にすることができます。

Q3:ロイヤリティ構成要素

ロイヤリティ構成要素とは、顧客が商品・サービスのどの部分を具体的に評価しているのかを確認する要素です。
顧客の評価部分を把握することで、改善点を明確にすることができ、具体的な施策の打ち出しに繋がります。

Q4、5:顧客・セグメント・行動

最後に盛り込む点は以下の2点です。
・顧客属性・セグメント:性別、年齢、職業、居住地について
・行動:顧客がどのような行動を起こすか
それぞれの項目に関して、以下のような質問をします。

「顧客属性・セグメント」では、「あなたの(性別/年齢/職業/居住地)を教えてください」と質問することで、どのような顧客が商品を購入しているか、属性ごとのロイヤリティの違いを分析できます。
例えば、「40代/男性/会社員/東京在住」の顧客からの回答が多くあれば、要望を整理して改善することで、顧客属性からの顧客ロイヤリティを上げることに繋がります。
また、顧客属性ごとで感じていることが違う場合もあるため、結果を集計していけば、ある程度パーソナライズ化された顧客体験を作り出すことも可能です。

「行動」では、「あなたは〇〇(企業/サービス/商品)を家族や友人に薦めたいと思いますか?」と自由記述で質問します。
例えば、「商品は良いと思うけれど、接客が悪いからおすすめできない」といった回答があれば、店員の接客を改善することで、顧客ロイヤリティを上げることに繋がります。
このように「行動」の項目を自由記述で設けることで、数値ではわからない回答をもらうことができます。

NPSの分析方法

企業がNPSを分析する上での方法は次の2つが挙げられます。
・NPSの計算
・自由記述の分析
以降、それぞれ解説していきます。

NPSの計算

まずはアンケート結果をもとに、顧客属性の割合を算出します。
推奨度の質問から得た結果を整理していきます。
整理する上では、以下の基準を参考に振り分けていきます。
・推奨者:10〜9点
・中立者:8〜7点
・批判者:6〜0点
整理した後、それぞれの割合を算出します。
例えばアンケートに100名が回答したとします。
アンケートの結果、推奨者が20名、批判者が15名だったとすると、推奨者の割合が20%、批判者の割合が15%です。
それぞれの割合を出した後、推奨度スコアの算出を行います。
NPSの推奨度スコアを算出するためには以下の計算式を用います。

NPS=推奨者の割合-批判者の割合

結果によってNPSの度合いを判断します。
NPSの計算から算出されるスコアの範囲は、-100%(回答者全員が批判者)から、100%(回答者全員が推奨者)となっています。

先ほどの例をもとにすると、推奨者スコアは以下の形で算出されます。

20%(推奨者の割合)-15%(批判者の割合)=5%(推奨者スコア)

上記の結果から顧客がどの程度、自社の商品・サービスを他の人に薦めたいかを明確にすることができます。

自由記述の分析

商品・サービスの推奨・非推奨理由に関しては、自由記述によって確認します。
顧客が非推奨と回答していても、スコアのみではどうして非推奨なのか、理由まではわかりません。
そのため、以下3つの手順で「評価の理由」を知る必要があります。
・ネガティブコメント・ポジティブコメントを分ける
・顧客の属性等から傾向を見る
・ドライバーチャートを活用する
以降、1つずつ解説していきます。

ネガティブコメント・ポジティブコメントを分ける

以下のような表にまとめるとわかりやすくなります。

アンケート回答には、多くのネガティブコメント・ポジティブコメントが記入されています。
特にネガティブコメントに関しては、今後の改善に繋がるコメントが記入されている可能性が高いため、しっかり確認することが重要です。
ポジティブコメントに書かれている内容に関しては、どの部分を他の人に薦めたいと思うのかが分かるため、自社の商品・サービスの強みを把握することができます。

顧客の属性等から傾向を見る

前述した通り、アンケート中に属性を質問することで、顧客属性からの傾向を見ることができます。

・性別
・年齢
・職業
・住居

上記のような質問を追加しておくことで、商品・サービスに対して属性ごとでどのような意見を持っているのか把握することができます。
またこの顧客を推奨者・中立者・批判者に振り分けることも重要です。
属性ごとの推奨度スコアを算出することで、属性ごとのスコアの高い低いを把握して、今後の改善に繋げることができます。

ドライバーチャートを活用する

ドライバーチャートとは4象限の表を活用し、各項目が推奨度にどの程度影響しているのかを表す分析方法です。
ドライバーチャートを活用することで、どこから着手すれば、顧客ロイヤリティを向上させられるか、施策の優先順位をつけることができます。
ドライバーチャートでは以下の4つの項目が用いられます。

・重点維持項目:自社の顧客ロイヤリティを生み出している現在の強み
・優先改善項目:顧客ロイヤリティと相関性が高いため優先的に改善すべき項目
・基本維持項目:顧客ロイヤリティと相関性が低く優先度も高くない項目
・観測・注意項目:推奨度・満足度ともに低い(様子)

以上の項目をもとに、アンケート結果を振り分け、項目ごとの今後の対応を明確にしていきます。

特に優先改善項目は、顧客ロイヤリティとの相関性が高いにもかかわらず、満足度が低い項目のため、他の項目と比較して即座に改善を図ることが重要です。

例えば調査の結果、ドライバーチャートの優先改善項目に、「問い合わせ時の応対の良さ」がある場合には、問い合わせ時の対応に関して優先的に改善を行う必要があります。
このようにドライバーチャートを活用することで、顧客ロイヤリティを上げるために何を優先的に行う必要があるのか、明確にすることができます。

NPSの活用

NPSの結果を分析して、数値やその理由を把握したら、以下2つの方法で活用していきます。

・自社業界内との比較
・改善すべき課題の洗い出しと優先順位付け

以降、1つずつ解説していきます。

自社業界内との比較

NPSを活用する1つ目の方法は、自社業界内と比較することです。
例えば、自社が通販化粧品業界に属している場合、自社と業界平均および競合のNPSスコアを比較します。

業界平均のNPSスコアが-10.7で、自社が-11.2であった場合、業界平均と自社の間には-0.5顧客満足度に差が発生していることがわかります。
そこで顧客ロイヤリティを生み出している要素を確認し、「注文のしやすさ」に課題がある場合には、ネットで注文を行うシステムの改善を行う必要があります。
自社業界内との比較を行うことで、自社と業界平均のNPSの比較、顧客ロイヤリティを改善するための施策を、明確にすることができます。

改善すべき課題の洗い出しと優先順位付け

NPSを導入することで、自社の商品・サービスに対する改善点が明確になります。
改善点を明確にしたら、それに対してどのような課題があり、課題解決のためにすべき施策を具体的に打ち出していく必要があります。
しかし、課題は多くあったとしても、課題解決に割ける人員や時間は限られており、全ての施策を同時に行うことは難しいです。
そこで、打ち出した施策に優先順位をつけていきます。
まずは施策の中でも、「改善に取り組みやすい項目」および「早急な改善が必要な項目」を優先的に行うことが重要です。

例えば、通販化粧品業界のNPSで、「商品の種類」「商品の探しやすさ」「問い合わせ時の対応」といった課題が明確になったとします。
その際に、自社にとって最優先で高く取り組む必要があるのは「商品の探しやすさ」です。
自社のサイトが商品を探しづらいサイト構成になっていた場合、商品の種類を増やしても見つけづらいという問題点が発生することが容易に想像されます。
また、根本的に使いづらいサイト仕様のためクレームが発生、もしくはそもそも購入されずに離脱する可能性も高く、問い合わせ対応を先に改善しても、顧客ロイヤリティを生み出すことには繋がりません。
まずは、商品が探しやすいようにサイト環境の改善を行うことで、商品の種類・問い合わせ時の対応といった課題解決が顧客ロイヤリティを生み出すことに繋がってきます。

物事の重心を考え、優先順位をつけて改善に取り組むことで、他の改善すべき課題に関しても連鎖的に改善することができるようになります。

NPSの留意点

NPSの調査方法や分析方法に関して説明してきましたが、調査を実施する際には、留意することが3つあります。

・サイレントマジョリティの存在
・批判者ばかり意識しない
・数値の結果だけで判断しない

以降、1つずつ解説していきます。

サイレントマジョリティの存在

顧客にアンケートを配布したとしても、実際に回答するのは一部の顧客であることが多いです。
アンケートに答えてくれる顧客の推奨度スコアは、NPSで明確にすることができます。
しかし、アンケートに回答しない「サイレントマジョリティ」と呼ばれる顧客は、分析することができません。
またアンケートに答えた顧客よりも、サイレントマジョリティの割合が圧倒的に多い場合、正確な分析結果を出すことができず、実態を把握できていない不十分な結果になってしまいます。
顧客に回答を強制することはできませんが、十分な分析結果を得られるような回答数を獲得できるよう、顧客に働きかけることは重要です。
アンケートを配布する際に、顧客に対して「回答してほしい」旨の一言を添えるだけでも、回答数は変化します。このように、顧客の回答率を上げることも考えましょう。

批判者ばかり意識しない

批判者の回答は商品・サービスの改善に繋がる意見も多く得ることができますが、必ずしも有益な意見であるとは限りません。

批判者の存在は企業にとって、批判的な評判が広がってしまう要因になるため、企業は意見を汲み取って批判者を減らす努力をする必要があります。
しかし、批判者の中には、自社がターゲットとしている層からズレた回答をしている可能性もあります。
批判者の意見ばかり重視すると、推奨者が求めている価値が提供できなくなることもあり得ます。
その結果、推奨者が離れてしまえば、企業にとって損失になってしまいます。
上記の様な事態が多発した場合はサービス品質やプロダクトの見直しではなく、集客戦略やマーケティングコミュニケーションの設計に問題点が考えられるためプロモーション工程の見直しをおこないましょう。
批判者の意見を確認する場合には、本当にその意見は改善する必要があることなのかを見定めることが重要です。
そのためにも商品・サービスを提供しようとしているターゲット層を整理して、どのような意見が本当に必要なのか明確にした上で、批判者の意見を確認するようにしましょう。

数値の結果だけで判断しない

NPSの分析結果で自社の商品・サービスの推奨度を把握することはできますが、数値の結果だけで判断しないことが重要です。
数値の結果は商品・サービスが提供する価値の全てではありません。

NPS分析を行った結果、-20%の数値が出たからといって、その商品・サービスを廃止するといった考えは早計です。
NPSのデメリットでも解説したように、日本人はスコアを選択する際に、中央値の数値を選択する傾向があります。
NPSにおける推奨度スコアは0〜10であり、中央値になると5点です。
この5点は推奨度スコアの基準で考えると、批判者に位置付けされます。
そのため、計算した結果、マイナスの数値結果になる可能性は比較的高くなります。

しかし、数値の結果だけで判断しないといっても、推奨者の基準である9〜10点はつけていないことは事実です。
重要なのは、NPSの結果をもとに、1人でも多くの顧客を推奨者のスコアにするために、改善行為を実施し続けることです。

まとめ

このコンテンツでは、以下のトピックを紹介しました。
・NPSについてと顧客満足度との違いに関して
・NPSを導入することのメリット・デメリット
・NPSの分析と結果をもとにした活用方法
・NPSを導入する上で留意すること

NPSを実施することで、商品・サービスに対する顧客の将来的な行動を把握し、長期的な業績の向上に繋げることができます。
NPSは数値結果だけで判断するのではなく、回答した理由をもとに改善を行い、推奨度スコアを上げるための施策を打ち出すことも重要です。

NPSを活用し、推奨度スコアを上げる取り組みを継続することで、自社の商品・サービスのファンをさらに増やしていくことが可能になります。
このコンテンツを参考に、NPSの特徴、メリット・デメリット、活用方法に関する理解を深めていただけたら幸いです。

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