採用・教育

人事機能を適正化するには?

2022/03/18

自社の安定的な経営のためには、新しい人材の採用は必要不可欠です。しかし、人手を増やしたいのに、求める人材が集まらなかったり、せっかく人材を採用しても、すぐ辞めてしまったり、採用活動がなかなかうまくいかないことも珍しくありません。採用活動がうまくいかない原因は様々ですが、中にはその原因が自社の対応にあることも考えられます。自社の採用に関する意識を変えることで、採用が上手くいくケースもあります。この記事では、採用活動を担う人事が置かれている状況や人事機能を向上させるために必要なことを紹介します。

Contents

採用が上手くいかない理由とは

人事機能不全を招く弊害

企業の人事は、人材の要件定義から求人票の作成、スカウト対応、採用管理システムの運用、面接対応など日々業務に追われています。その中でも事業成長に向けて【組織で活躍する人材採用】を遂行していかなければなりません。しかし、専門性の高い職種や、ポジションが細分化されていく中で人事が全ての職種の業務を網羅するのは大変難しいことです。人事担当者自身が実務をしたことのない職種が多い中で、判断しなければいけない要件定義やスカウト、ターゲットの選定、面談など全てにおいて当事者と同じ目線で職種理解に努めなければいけません。

しかし、何かと目の前の業務に追われている人事は、応募数をどのくらい獲得するかなど目の前のことをKPIに置きがちです。応募数の先が見えていない意識で採用活動を行うと本来の採用目的である事業成長に寄与できずに人事機能が意味をなさない状況に陥ります。このような人事の動きでは、日々難易度が上がる採用市場では戦っていけないため、より戦略的な採用活動を行う必要があります。
たとえば、求人メディアを採用手法として活用してきたが自社が求める人材がなかなか集客できていない課題があるとします。その時、人事が考えなければいけないのは、応募数ではなく事業成長や採用したいペルソナ像に対してその採用手法が合っているかどうかという点です。現場からあがってきた要件をそのまま使い慣れている求人会社に伝え、掲載しているだけでは本質的な採用はできません。求人を掲載することでさまざまな人の目に触れるので認知の観点では良いかもしれませんが、人材獲得が目的であるならば採用チャネルを効果検証から見直し、職種によって総合媒体や特化媒体の使い分けをしていく必要があります。また、メディアや職種ごとにスカウト配信を行い、開封率や応募率などから自社に合う採用手法を可視化します。このように短期的な目標達成にリソースを注ぎながらも、中長期的を見据えて記事のライティングや採用イベントといった採用広報を並行して認知施策を高めていく必要があります。このスキルは営業やマーケターに通ずるものがあり、PDCAサイクルをまわし改善を繰り返し行うことで最適化を図っていくことが人事の使命です。効果検証から最適化された採用チャネルや採用広報によって「認知」から「入社」その後の「活躍」に至る全プロセスにおいて採用手法を複合的に活用して事業成長につながる人材獲得を実現する戦略を行います。

人事機能を向上させるためには

事業成長の目的に合わせた人材獲得

人事は、その企業の採用力を左右する重要なポジションです。人事は経営者と同じ目線で自社について詳しく理解しておく必要があります。経営陣や現場が必要としている人物像を解像度高く把握するには、事業計画と業務内容を理解する必要があります。そうすることで求職者に説明すべきネタがたくさん生まれます。伝書鳩的な人事ではなく、自社を客観的視点で強みや特徴を自らの言葉でアウトプットでき、事業やチームの課題を理解して、その課題を解決できる人材に対して入社意欲を高めることができる人事は社内でも信頼が置ける存在としてポジションが確立されます。

採用市場の理解

・労働人口減少による人材不足や雇用の流動化

生産年齢人口とは:
15歳以上65歳未満の年齢に該当する人口を指します。

労働市場は、2000年代の生産年齢人口(生産活動の中心にいる人口層)の減少を皮切り(2000年代)に、買い手市場から売り手市場に変化していきました。そして、国は徐々に労働者を保障する政令、仕組みを作っていきました。人材業界ではこの時期、インターネットの普及により紙からWebへの移行、そこからテクノロジーを駆使したサービスが次々と誕生しました。
労働人口の減少や企業の生産性低下に伴って終身雇用が失われつつある日本では、ジョブ型雇用が取り入れられ、ポジションが明確化された転職が当たり前の時代になりました。終身雇用では、総合職として社員を採用し、企業が個人の適性に合わせて配置転換や異動を通して企業活動に必要なスキルを備えた人材を育成していましたが、ジョブ型雇用は、職種や業務内容、勤務地などを明確に定めた上で雇用を結びます。人材の流動性が高いIT業界や海外企業では、市場価値に見合った待遇を提示できないと人材を獲得することができず、仮に獲得できてもすぐに辞められてしまうため、魅力的な待遇提示が急務なことも、ジョブ型雇用への転換を後押ししています。これは、専門性を持った職種の人材が一つのキャリアを磨くために必要な働き方です。

・働き方改革への対応

従来は終身雇用が主流だったように、社員はゼネラリストとして組織にフルコミットする働き方を求められましたが、現在は多様な働き方が増えてきました。採用市場は働き方改革や副業解禁によって、社員だから、外部の人間だからという雇用の棲み分けは今後どんどん境界線がなくなってきています。外部人材を含めた組織づくりが主流になる時代も目の前にきている状況です。
仕事を選ぶ選択「報酬」から「働き方の自由」を強く意識する時代が訪れ、独立、副業、複業、パラレルキャリア、移住、リモートワークなど働き方の多様化が進んでいきます。働き手の選択肢が増える中で、企業は選ばれるために努力をしなければいけない時代です。本質的に従業員の幸福を考え、実行できている組織でなければ人材獲得競争に勝てなくなります。

・市場に落ちてこない優秀な人材を確保(外部人材の活用)

採用市場は今、超売り手市場と言われるように求人広告の出稿や人材エージェントにお願いして待っているだけでは、優秀な人材を獲得するのは難しくなってきています。これは、優秀な人材は転職市場に出る前にリファラル採用などで転職することが多いためです。
そこで企業は、優秀な人材のリソースを全て確保する社員としての雇用だけではなく、少しでもナレッジをシェアしてほしいという考えから副業や業務委託(フリーランス)人材の活用が増えています。副業や業務委託の市場では転職市場に比べて優秀な人材と出会える可能性が高くなります。副業や業務委託の動きはテレワークが進んだことで加速しており、副業・業務委託マッチングサービスの市場も拡大しています。副業人材と同じように優秀な人材を確保する方法として、フリーランスの活用があります。組織でスキルを磨いたあと独立するケースが多く、ビジネススキルを備えた人材に出会える可能性が高いです。中には、外部人材として組織に参画した後にフルコミット(社員化)するケースもあり、転職市場ではなかなか出会うことのできない優秀な人材を獲得することにもつながる場合もあります。このように採用市場は、雇用を前提とした転職市場から業務委託等による外部人材のマーケットへと拡大し、人材獲得手法も多様化しています。


(図:経済産業省関東経済産業局「外部人材活用ガイダンス」より)

外部人材の活用が広がる背景

先述した通り、日本の労働人口は少子高齢化によって減少し、2000年に約8,600万人いた生産年齢人口は2060年には4,500万人を切ると推測されています。中でも、IT人材の人手不足は著しく、エンジニアは2018年時点で8倍の求人倍率という試算もあります。
昨今の採用市場では、各社がオリジナルの採用広報や福利厚生制度を打ち出し、採用SNSと呼ばれるメディアや採用コンサルティングのニーズも高まっています。それでもなお、多くの企業が「人が足りていない」という課題を抱えています。もはや正社員雇用は希少性が高く、企業間で奪い合うものになっています。企業間競争が激化する中で雇用の新しい選択肢として、業務委託による副業・フリーランス人材の活用に期待が寄せられています。
報酬や拘束時間などの面で正社員雇用では獲得難易度の高いプロフェッショナル人材に業務に関わってもらうために、注目が集まっているのが副業をする会社員やフリーランスなどの外部人材への業務委託です。優秀な人材の時間や稼働日数を、複数の企業でシェアして活用することで、必要な技術やノウハウの獲得を実現するという考え方が日本でも浸透しつつあります。外部人材の活用は社員の過重労働是正にもつながるほか、新しい視点が社内に加わりイノベーションを生むきっかけとなり得ます。社外の専門性をもった人材のスキルや知見を活用するという側面は、ジョブ型雇用の考え方に通ずるものがあります。正社員ではなく、部分的な業務や、必要に応じた業務量をオーダーできる外部人材の活用は今の採用市場と非常に相性が良いものです。

2018年1月には厚生労働省によりモデル就業規則の改定案が公表され「副業元年」 と言われてから4年が経過しました。2021年10月時点でフリーランス人口は約1577万人、経済規模は約23.8兆円とされています(ランサーズ株式会社「新・フリーランス実態調査2021-2022年版」より)。その背景には、社会的に独立・副業を容認する動きがあり、ハードルが大幅に下がったことがあります。クラウドストレージやWeb会議システムのお陰で場所や時間にとらわれない働き方(リモートワーク)が可能になったことから副業・フリーランス人材の人口は今後も増加すると考えられます。

外部人材を活用するメリット

外部人材活用のメリットは、業務委託契約は雇用契約と比べて人件費もミスマッチリスクも少なくて済むので、一つでも気になるメリットがあれば、まずは一度、短期間の案件からでも、外部人材を活用してみることが可能な点です。ただし、「労働基準法を気にしなくて良い融通の利く安価な労働力」という感覚で外部人材を活用してしまうと、トラブルが生じがちなので、雇用契約と業務委託契約の違いをしっかり理解しておく必要があります。

1.必要な技術、ノウハウや人材の獲得
専門性の高い業務もしくは新規事業などに着手する際、社内に知見がない場合があります。そのときは、外部の企業や人材の力を借りるほうが得策です。
圧倒的な労働人材不足の中、高い専門性やスキルを持つ人材を探すのは困難で、年収も高騰しています。リモートワークを加味した業務委託で、成長企業で活躍する優秀な人材の力をシェアして活用できることは採用難を解決する手段として有効です。

2.社員の業務量・負担の軽減
外部人材を活用するメリットは、専門性の高い業務をスムーズに行えることです。
「働き方改革」で、過重労働是正が叫ばれている中、外部人材のリソースやアイディアを取り入れることで社員の負荷を軽減し、より高付加価値業務に集中してもらうことができます。

3.資金と時間の節約
新規・未知の領域は自社で試行錯誤するより、その道の専門家や経験者に頼む方が資金も時間も節約できます。クラウドソーシングでは、場所や時間の制約がない単純作業を迅速かつリーズナブルに発注することも可能です。

4.柔軟な人材活用
副業・兼業人材は、必要な時に、必要な分だけ、自身のスキルや専門性を活かし即戦力として活躍する働き方で、働き手もそれを望んでいます。人件費が変動費となり、激しい環境変化に柔軟に対応できる点もメリットになります。

5.オープンイノベーション
これまで社内には存在しなかったような異質でユニークな人材が組織に加わることで、新たな視点やネットワークをもたらす可能性が高まります。外部人材と協創するところから、革新的なイノベーションは生まれます。

6.採用のお試し体験
採用には、期待にそぐわなかったり相性が合わなかったりというリスクが付き物ですが、移住や事業承継のお試し期間としての副業・兼業を通じ、お互いに相性や環境を見極めた上で、長期的な関係に移行できます。

*出典:経済産業省関東経済産業局「外部人材活用ガイダンス」

外部人材の探し方

外部人材が注目を集めるようになり、職種特化型のサービスやビジネスモデルに合わせたサービスなどさまざまなマッチングサービスが登場していますが、大きく分けて、再委託型、あっせん型、プラットフォーム型、メディア型の4つのタイプがあります。

①再委託型(募集から業務遂行まで)
仲介事業者自身が企業から業務を委託し、副業・フリーランス人材に再委託する方法です。

②斡旋型(募集から契約成約まで)
仲介事業者が介在して、副業・フリーランス人材の要件定義や業務の切り出しなど契約成約まで企業をサポートする方法です。

①、②は仲介事業者のサポートが充実しているので、マーケティング戦略の設計やディレクションなどプロジェクト単位の業務を依頼したい際におすすめです。

③プラットフォーム型(募集から契約成約まで)
仲介事業者が提供するシステムを通じて企業と副業・フリーランス人材が直接契約を行う方法です。

④メディア型(募集まで)
業務委託案件を掲載できる求人広告メディアやSNSなどを介して募集・契約を行う方法です。

③、④は手数料が安価のため、企業が要件定義や業務内容の切り出しがしやすいタスク型の業務を依頼する際に適しています。

外部人材と言われる副業・フリーランス人材で一定の評価がされている人材は、人脈や、取引先からの紹介で仕事を獲得するケースがほとんどです。しかし、これまで外部人材の活用を行ったことがない企業にとっては、外部人材を自力で探すことが難しいです。外部人材の活用法や要件定義、業務の切り出しなどがわからない場合は、仲介事業者を通じて外部人材を探すことで、要件に合った人材と出会うことができ、社内のパフォーマンスを最大限引き出せる可能性が高まります。

まとめ

労働人口が減少する中で働き方の多様化や、新しい人材獲得の手段が確立してきています。人事はこうした変化を常にキャッチアップし、組織運営に反映していくことが求められます。外部人材を活用する際は、能力を最大限発揮してもらうため、外注と捉えるのではなく、自社の一員として捉え、オープンな情報共有やコミュニケーションを心がけましょう。
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